技術コラム
低頭六角ボルトとは?特徴・用途、当社の製作のポイントをご紹介!
低頭六角ボルトとは?
低頭六角ボルトとは、その名称が示す通り、一般的な六角ボルトと比較して頭部の高さ(厚み)が極端に低く設計されている締結部品です。装置・機械・ロボットの設計において、省スペース化や軽量化、あるいは意匠性の向上が求められる場面で、必須の部品として広く採用されています。この部品の調達においては、その特性を深く理解し、用途に応じて適切に選択することが重要です。
低頭ボルトは、頭部が低いことによって、標準的な六角ボルトでは実現し得ない、特定の設計上の利点をもたらします。
頭部が低いことで生まれるメリットとデメリット
頭部が低いことの決定的なメリット
低頭六角ボルトが設計に与える影響は、単に「頭が薄い」という表面的な特徴に留まりません。その薄さが、装置全体の構造や性能に決定的なメリットをもたらします。
締結部の省スペース化に貢献
頭部厚さが薄いことで、他部品のと干渉を避けることが可能です。これは、特に複雑で高密度な配置が求められる設計において、設計自由度を向上させます。、装置全体の小型化や軽量化に直結します。特に、ロボットや精密機器など、限られた内部空間に多数の部品を組み込む必要がある分野において、ミリ単位の空間創出は極めて高い付加価値を生み出します。
部品の軽量化を達成
頭部の体積が削減されることは、そのままボルト一本あたりの重量削減を意味します。多数のボルトを使用する大型装置や、高速で動作する可動部の軽量化は、慣性力の低減やエネルギー効率の向上に直接貢献するため、設計要求として非常に高まっています。
意匠性の向上と安全性の確保
ボルト頭部が出っ張らない、あるいは極限まで低く抑えられることで、外観意匠が洗練され、製品の品質感を向上させます。また、頭部の突出による作業者や他の部品との接触リスクを最小限に抑えることは、安全性の確保という点からも重要です。
低頭化がもたらすデメリットと課題
一方で、低頭化はメリットばかりではありません。頭部が低いことは、締結部品としての基本的な性能、特に強度や作業性において、一部デメリットもございます。調達担当者は、設計部門からの要求を精査する際、このデメリットを適切に把握しておく必要があります。
締結強度の低下
頭部が薄くなることで、座面(ボルト頭部と被締結材が接する面)が小さくなります。この構造的な変化は、必然的にボルト自体の引張強度やせん断耐力に影響を与え、標準ボルトと比較して締結に必要な十分なトルクをかけられないケースが生じます。特に高負荷がかかる箇所での使用には、材質選定や強度区分に細心の注意を払う必要があり、適切なトルク管理が非常に難しくなります。
工具(スパナ・レンチ)の使用限界
頭部が極端に低い場合、工具をかけるための六角部分の高さが不足したり、レンチの肉厚が干渉したりする可能性が生じます。これにより、適切な工具での締め付けが困難になったり、締結時に破断しないように注意する、作業性が著しく低下したりするリスクがあります。
これらのデメリットを踏まえると、低頭六角ボルトの選定は単なる「カタログ品番の選択」ではなく、要求される強度と、実現可能な低頭化レベルとのバランスを追求する、高度な技術判断が不可欠となります。
標準品の低頭六角ボルトでは満たせない設計要求
一般的な低頭六角ボルトの標準品は、JIS規格をベースにした市場規格の範疇に留まることが多いため、以下のような「極限の設計要求」には対応が困難となります。
1. 極限まで低い頭部厚さの要求
設計上のスペースが非常に限られている場合、カタログに記載されている標準的な低頭ボルトの頭部厚さでは、仕様に満たないことがあります。この特注の要求は、標準品の製造プロセスでは対応が難しく、特殊な加工技術を必要とします。頭部をさらに低く削り込むと、前述したように締結強度や工具限界という根本的な問題に直面するため、単なる切削以上の技術的知見が不可欠となります。
2. 特殊な材質や強度の同時要求
軽量化のためにチタンや高強度アルミニウムといった難削材が求められたり、特定の環境下(高温、極低温、耐薬品性)に対応するために特殊なステンレス合金が指定されたりする場合があります。これらの特殊材質は、標準品のラインナップが限られるだけでなく、加工自体が難しく、特に低頭化のようなシビアな加工を施すことで、材料特性を損なうリスクが高まります。標準品メーカーでは、ロットの兼ね合いや加工難易度から、これらの特殊要求を断るケースが多発します。
3. 複合的な特殊仕様の組み込み
低頭化に加えて、極細目ねじ(ファインピッチ)、左ねじ、あるいはねじ部のテーパー加工など、複数の特殊な仕様を複合的に要求されることがあります。標準品では、これら個別の特殊仕様に対応できたとしても、「低頭化」と「特殊ねじ山」を両立させるための製造技術を持つサプライヤーは極めて限られています。調達担当者は、複数のサプライヤーに打診しても、仕様の一部が原因で断られてしまうという悪循環に陥りがちです。
低頭六角ボルト製作における当社の特徴とは?
規格品への追加工から特注の低頭六角ボルトを製作可能!
低頭六角ボルトの製作において、フルカスタムでの製作は高コスト・長納期という課題に直面します。しかし、当社では市場に流通する規格品の六角ボルトへの高精度な追加工が可能です。これにより、金型などの初期投資を大幅に圧縮し、納期も大幅に短縮することが可能です。加工においては、単に頭部を切削するだけでなく、加工熱や残留応力を厳密に管理することで、ボルト本来の強度区分を維持することも考慮しています。規格品への追加工は調達コストの最適化を図りたい調達購買担当者様にとって、最も現実的かつ有効な手段です。
2. 様々な形状、材質の低頭ボルトの特注製作が可能。
規格品での対応が困難な極めて特殊な低頭化の要求に対しても、当社は長年の実績に裏打ちされた特注製作の技術力で対応いたします。軽量化を目的としたチタンや、特定の環境下で使用される特殊ステンレス合金などの難削材を用いた低頭ボルトの製作実績が多数ございます。また、低頭化に加え、極細目のねじピッチや左ねじなどの複雑な特殊加工の複合的な要求にも柔軟に対応可能です。ネジだけでなく、ナットやワッシャーなどの周辺部品の一貫製作も承りますので、他社で断られた案件や、設計部門からの厳しい要求も、まずは当社にご相談ください。
製作事例
低頭ネジ 追加工品

こちらは、電線を製作する設備のメンテナンスに使用される低頭ネジです。
お客様より、装置の扉に取り付けられていたネジを紛失したため、5個という小ロットでの製作をご依頼いただきました。他部品との干渉を防ぐため、市販品よりも頭部を小さくする追加工をご要望いただきました。
M8x100 黒染め六角ボルト

軸受け関連の製品組み込みで、お客様から六角ボルトの追加工(メーカー刻印の削除、ネジ部の延長)をご依頼いただきました。市販品では、有効ネジ長さが足りないことが課題でした。
まず、NC旋盤でボルト頭部のメーカー刻印を削除し、当社の専用工具でネジ部を指定寸法まで延長する加工を行いました。お客様の求める有効ネジ長さを確保しつつ、均一な品質で製作しています。
また、もともと黒染めが施されたボルトでしたが、追加工によって露出した金属部分が露出するため、防錆対策として再度メッキを行っています。
特注の低頭六角ボルトの製作は当社にお任せください。
低頭六角ボルトの調達で直面する「低頭化」「高コスト・長納期」の課題は、当社の技術で解決できます。当社は、フルカスタム製作での製作はもちろん、規格品の六角ボルトへの高精度な追加工によって、特注の低頭六角ボルトを提供いたします。これにより、初期コストを抑えつつ、強度を維持した特殊な低頭化を短納期で実現します。チタンなどの難削材や特殊規格にも対応可能です。「他社で断られた」特殊な低頭ボルトの調達は、技術と調達効率を両立させる当社へご相談ください。