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技術コラム

なぜネジが緩むのか?原理と具体的な対策方法を紹介します。

歯つき座金
製品の信頼性や安全性を脅かす「ネジの緩み」。設計者や製造現場にとって、これは避けて通れない永遠の課題です。ネジが緩む原因を理解せずに闇雲に対策を施しても、コストがかかるだけで効果は薄いでしょう。

この記事では、「なぜネジが緩むのか」という根本原理から解説し、現場で役立つ具体的な緩み止め対策までをご紹介します。

なぜネジは緩んでしまうのか。まずは緩む原理から理解しよう。

ネジが緩む原因は、主に「非回転性の緩み」と「回転性の緩み」の二つに大別され、特に問題となるのは後者です。

非回転性の緩み(埋没・陥没による緩み)

これは、ネジ自体が回転せずに、軸力が徐々に低下していく現象です。

  • 座面やねじ山の陥没(初期緩み)
    締め付けた後、時間経過とともに座面やねじ山が圧縮され、材料に「へたり」が生じます。特に、木材や樹脂など柔らかい材料を締結した際に顕著に発生します。
  • 熱膨張・収縮
    温度変化により、ボルトと被締結材の熱膨張率が異なる場合に軸力変動が起こり、緩みが発生します。
  • クリープ
    高温下で材料が長時間応力を受け続けることで、塑性変形(伸び)が生じ、軸力が低下します。

回転性の緩み(真の緩み)

これは、ネジが緩む方向に回転して軸力が失われる現象で、緩み止め対策が最も重要となる原因です。

外部からの振動や衝撃により、ネジと部材の接合面に「横滑り(軸に対して垂直な方向の変位)」が発生します。横滑りが起こると、ねじ山の接触面で摩擦力が低下し、ボルトが緩む方向に回転する力が勝ってしまい、ネジが徐々に自転し緩んでいきます。この現象は、ドイツ工業規格に基づいた「ユンカー試験」などで再現・評価されます。

ネジの緩みのリスクとは

ネジの緩みは、単なる部品の脱落に留まらず、製品の信頼性、安全性、そして企業のブランドイメージにまで影響を及ぼします。

  • 製品の機能停止・破損
    締結力が失われることで部品同士が分離し、機械の機能が停止したり、最悪の場合、構造的な破損や倒壊を招いたりします。
  • 重大な事故・人命への影響
    自動車、航空機、医療機器、インフラ設備など、安全性が最優先される分野では、ネジの緩みが重大な事故や人命にかかわる原因となり得ます。
  • メンテナンスコストの増加
    定期的な点検や増し締め、破損した部品の交換といったメンテナンス費用が恒常的に発生します。
  • 製品の信頼性低下
    納入後のトラブルは、企業のブランドイメージや顧客からの信頼を大きく損ないます。

ネジの緩み対策の具体的な手法を解説

ネジの緩みを防ぐための対策は、その緩みの原理に応じて様々な手法が存在します。ここでは、現場でよく用いられる具体的な緩み止め対策をご紹介します。

1. スプリングワッシャ

スプリングワッシャ(ばね座金)は、最も一般的に使用される緩み止め部品の一つです。ねじの締め付け時にワッシャが平らになろうとする反発力を利用し、座面から常に圧力をかけます。この力で、座面のへたりなどによる非回転性の緩み(軸力低下)を抑制する効果が期待できます。

2. ナットを2個使用して、締結力を高める

ダブルナット(二重ナット)は、ナットを2つ使用することで、ねじの回転を物理的にロックする手法です。

ボルトに対してナットを2つ使用し、これらを互いに押し付け合うことで、ねじの軸部に強い摩擦力を発生させます。この摩擦力が、外部からの振動によるネジの緩む方向への回転力を上回り、回転性の緩みを確実に物理的にロックします。確実性の高い緩み止め手法の一つです。

3. 接着剤の使用

これは、化学的手段と物理的手段によってねじを固定する手法です。ねじ部に液状のねじロック剤(接着剤)を塗布し、締め付け後に硬化させて固定します。硬化した樹脂がねじの隙間を埋めることで、振動による緩みを防ぎ、高い緩み止め効果が得られます。

4.ネジ山をつぶして(かしめて)締結する

緩み止めのために、ナットのネジ山をつぶす、六角ナットのネジを1山つぶすボルトのネジ山を1山つぶす(カシメる)といった加工は、締結時にねじ山を塑性変形させることでオネジとメネジの間に強い摩擦を生み出し、回転を物理的に阻止します。これは、追加工によって強力な緩み止めを実現する手法です。

5.緩みにくい締結部品の使用(特殊機能ねじ)

最初から高い緩み止め機能や脱落防止機能が組み込まれている特殊機能ねじ(緩まないネジ)を採用することも、設計上の有効な対策です。例えば、座金組込みねじ(セムスネジ)のように、歯付き座金(セレート)を組み込んだ特殊ネジは、座金の歯が部材に食い込むことで高い緩み止め効果を発揮します。

ネジ、ボルト、ナットなど締結部品の課題解決は当社にお任せください

ご紹介したように、ネジの緩み対策は多岐にわたりますが、お客様の製品の使用環境や要求強度、コスト、納期によって最適な選択は異なります。

当社は、標準規格品では対応できない特殊な環境や高強度要求に対し、最適な締結部品を提案・提供いたします。

ネジの緩みという問題は、設計段階での適切な選定と、確実な加工技術で解決できます。特殊な六角ボルト、緩み止めナット、ピンなど、締結部品に関するお困りごとがございましたら、ぜひ一度当社にご相談ください。

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