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技術コラム

繰り返しの着脱に強い「スタッドボルト」の特徴と基礎知識についてご紹介いたします!

M4 スタッドボルト 真ちゅうメッキ品
スタッドボルトは、産業機械や各種設備において幅広く使用されている締結部品の一つです。ボルト頭を持たず、母材にねじ込んで使用する構造のため、限られたスペースでも確実な締結が可能で、繰り返しの組立・分解が必要な箇所でも母材を傷めにくい特長があります。また、高い締結力を安定して確保できることから、振動や高荷重がかかる環境でも信頼性の高い締結を実現します。本コラムでは、スタッドボルトの基本的な構造や役割から、他の締結部品との違い、用途や選定時のポイント、さらに当社が手掛けるスタッドボルトの特長について分かりやすくご紹介します。

スタッドボルトとは

スタッドボルトとは、両端にねじ山が加工された頭部を持たないボルトのことを指します。一般的には片側を母材にねじ込んで固定し、反対側にナットを締結することで部品同士を結合します。この構造により、ボルト頭の締結スペースを確保する必要がなく、コンパクトな設計が求められる装置や、狭所での締結に適しています。

スタッドボルト写真①

また、スタッドボルトは母材側のねじを固定側とするため、組立・分解を繰り返しても母材のねじ山が摩耗しにくく、メンテナンス性に優れている点も特長です。特に、エンジン、産業機械、圧力容器、配管フランジなど、高い締結力と信頼性が求められる箇所で多く採用されています。

材質やねじ規格、ねじ長さの自由度が高く、使用条件に応じた特注製作がしやすい点も、スタッドボルトが幅広い分野で使われている理由の一つです。

植え込みボルトとスタッドボルトは同じもの?

植え込みボルトとスタッドボルトは、形状としては同一のものを指す場合が多く、「呼び方が違うだけ」と認識されることも少なくありません。実際、どちらも頭部を持たない両ねじ形状のボルトであり、構造上の大きな違いはありません。

数少ない違いとして、植え込みボルトは製品によってナット側の端面が丸先形状になっている場合があります。ただし、端面が平先形状であっても植え込みボルトと呼ばれるケースもあるため、あくまで見分け方の一つとして参考程度に捉えるとよいでしょう。

スタッドボルト先端形状比較 平先 丸先

一方で、呼称の使われ方には明確なニュアンスの違いがあります。スタッドボルトは部品としての正式な名称で、JIS規格や設計図面、仕様書などで用いられる一般的な呼び方です。ねじ径や長さ、強度区分などが明確に定義され、締結部品として分類されます。

これに対し、植え込みボルトは、スタッドボルトを「母材にねじ込んで固定し、ナットで相手部品を締結する」という使用方法に着目した呼称です。主に現場や実務の中で使われる表現で、施工手順や取り付け状態をイメージしやすい言い方といえます。

そのため、製品としては同じ形状であっても、設計・発注の場面では「スタッドボルト」、使用方法の説明では「植え込みボルト」と使い分けることで、意図がより正確に伝わります。

スタッドボルトを使用する目的・役割

スタッドボルトは、機械や設備において高い締結信頼性が求められる場面で広く使用されている締結部品です。単に部品を固定するだけでなく、耐久性や作業性、メンテナンス性の向上にも寄与する点が特長です。ここでは、スタッドボルトが持つ代表的な役割と、採用される理由についてご紹介します。

確実で安定した締結の実現

機械や設備において、安定した軸力を確保できるため、信頼性の高い締結が可能です。

母材ネジ部の損傷防止

スタッドボルトを母材に固定することで、分解・組立時の着脱はナット側のみとなり、母材側のねじ山を長期間保護が出来ます。

高荷重・高温環境への対応

軸力を安定して伝達できる構造のため、高荷重や高温、振動が発生する環境でも安定した締結状態を維持しやすくなります。

締結作業の効率化と品質の均一化

部品の位置決めガイドとして機能し、作業者によるばらつきを抑え、安定した組立作業を実現します。

メンテナンス性の向上

頻繁な分解・点検が必要な設備においても、作業性を損なわず確実な締結が行える点が評価されています。

スタッドボルトの用途

スタッドボルトは、ねじ部にかかる軸力を安定して伝達できる構造を持ち、締結状態のばらつきが少ない点が特長です。また、ボルト頭を持たないため応力集中が起こりにくく、振動や衝撃を受ける環境でも緩みにくいことから、耐振動性にも優れています。こうした特性により、長期間にわたって安定した締結力を維持することが可能です。

そのため、スタッドボルトは以下のような分野・用途で広く使用されています。

産業機械・工作機械

フレーム部の締結、減速機やベアリングハウジングの固定、カバー類の取り付けなど

プラント設備・配管フランジ

配管フランジの締結、熱交換器、圧力配管の接続部など

建設機械・重機

エンジン周辺部、油圧機器の取り付け部、構造フレームの固定箇所など

エンジン・圧力容器

シリンダーヘッド、タービンケーシング、圧力容器のフランジ部など

発電・エネルギー設備

発電機ケーシング、ボイラー周辺機器、風力・水力発電設備の締結部など

化学・食品プラント

反応槽、攪拌機、配管支持部など、洗浄や分解を前提とした設備部位

鉄道・輸送機器

台車部品、駆動装置、車両機器の固定部など

このように、高い安全性と信頼性、メンテナンス性が求められる締結部位において、スタッドボルトは業界を問わず重要な役割を果たしています。

スタッドボルトの選定

機械や設備の安全性・信頼性を左右する要素のひとつが、締結部品であるスタッドボルトの適切な選定です。見た目はシンプルな部品であっても、使用条件に合わないスタッドボルトを選んでしまうと、緩みや破損、さらには重大なトラブルにつながるおそれがあります。そのため、設計段階や更新・メンテナンス時には、使用環境や負荷条件を十分に考慮したうえで仕様を決定することが重要です。ここでは、スタッドボルトを選定する際に押さえておきたい主なポイントについて解説します。

スタッドボルト選定

使用荷重と必要な強度区分

例:プレス機フレーム、油圧機器取付部、エンジン固定部など、高い締結力が求められる躯体

使用温度や腐食環境の有無

例:ボイラー周辺、屋外設備、化学プラント配管部、高温・高湿環境下の装置躯体

材質(S45C、ステンレスなど)

例:一般産業機械(S45C)、高強度用途(SCM)、食品・医療設備や屋外設備(SUS)

ネジ規格、ネジ長さ、全長

例:フランジ締結部、厚みのある鋳物躯体、スペース制限のある装置内部

表面処理の要否

例:屋外架台(亜鉛メッキ)、耐食要求部(無電解Ni)、摺動や組立性を考慮した黒皮・潤滑処理

用途に合わない選定を行うと、緩みや破損につながるため、実際の使用環境や躯体構造を整理したうえで、適切な仕様を決めることが重要です。

コストを優先する場合は、できるだけ汎用規格・標準仕様を選定することが重要です。材質はS45Cなどの一般鋼を基本とし、強度区分も過剰にならないよう使用荷重に見合ったものを選びます。ねじ規格やねじ長さについても、標準寸法を採用することで加工工数を抑えられます。また、表面処理は必須条件でない限り省略、もしくは一般的な亜鉛メッキなどにすることで、トータルコストの低減につながります。

納期を優先する場合は、材料手配と加工工程をできるだけ簡略化できる仕様を選ぶことがポイントです。入手性の高い材質や在庫材を活用できる設計とし、特殊なねじ規格や複雑な表面処理は極力避けます。また、ねじ長さや全長を標準的な範囲に収めることで加工時間を短縮できます。事前に使用条件の優先順位を明確にしておくことで、必要最低限の仕様に絞り込み、短納期での対応が可能になります。

スタッドボルトにダブルナット締めが使われる理由

スタッドボルトの締結方法として、ダブルナット締めが採用されるケースは少なくありません。その理由は、スタッドボルトが使用される環境や役割と深く関係しています。

スタッドボルトは、母材にねじ込んで固定した状態で、反対側をナットで締結する構造です。このため、締結部は振動や衝撃、温度変化の影響を受けやすく、長期使用において緩み対策が重要となります。ダブルナット締めは、2つのナット同士を締め付けて互いに拘束することで、ナットの回転を抑制し、緩みを防止する効果があります。

また、プラント設備やエンジン、配管フランジなど、スタッドボルトが使われる現場では、高温環境や繰り返し荷重が発生することが多く、樹脂系の緩み止め剤や特殊ナットが使用できない場合もあります。その点、ダブルナット締めは構造がシンプルで、温度や環境条件の影響を受けにくく、安定した緩み防止効果を発揮します。

さらに、スタッドボルトの着脱や交換作業においても、ダブルナットは有効です。ナットを2枚掛けすることで、工具を使ってスタッドボルト自体を回すことができ、メンテナンス性の向上にもつながります。

このように、高い信頼性、環境適応性、メンテナンス性を兼ね備えた締結方法であることから、スタッドボルトにはダブルナット締めが広く採用されています。

当社が手掛けるスタッドボルトの特徴

当社では、図面に基づく特注製作を中心に、お客様の用途や装置仕様に最適なスタッドボルトをご提供しています。単品試作から少量生産、さらには量産まで幅広く対応しており、開発段階の評価品から量産部品まで一貫したサポートが可能です。

材質・表面処理についても、多様な選択肢を取り揃えており、使用環境や求められる強度・耐食性、コストバランスを踏まえた最適なご提案を行っています。

社内外の加工ネットワークを活かして、加工・表面処理・検査まで一貫して対応できる体制を整えています。また、柔軟な工程調整により、短納期案件にも対応可能です。

当社のスタッドボルト実績製品のご紹介

SUS303製 インチスタッドボルト 製作

インチネジスタッドボルト

製品組付けのために、指定寸法のインチネジスタッドボルト製作のご依頼を頂きました。市販ではインチのスタッドボルトがあまり流通していないため、当社にて全加工で製作対応致しました。錆びにくいことが重要とのご要望を伺っていたため、ご指定いただいていたSUS304の材質を快削材に変更することで、加工コストを削減しました。

詳しくはこちら

製品組み込みの為に、特殊形状のスタッドボルト製作をご依頼頂きました。市販のスタッドボルトは胴部がネジ山と同じくらいの径になりますが、今回はくびれさせてほしいとのご要望がございました。単品でのご依頼だったため、汎用旋盤で加工することで段取り時間を短縮しました。

M30 くびれスタッドボルト①

まとめ

スタッドボルトは、締結部の信頼性と作業性を高いレベルで両立できる、非常に重要な機械要素部品です。振動や高荷重、高温といった過酷な環境下でも安定した締結を実現できるため、産業機械やプラント設備をはじめ、さまざまな分野で欠かせない存在となっています。
用途や使用環境に応じて、材質・強度区分・ねじ仕様・表面処理を適切に選定することが、装置全体の安全性向上や長寿命化につながります。スタッドボルトの特注製作や仕様検討でお困りの際は、ぜひ当社までお気軽にご相談ください。

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