技術コラム
微細ネジ(マイクロネジ)とは?特徴や用途、加工方法を解説

近年、あらゆる製品の小型化・高機能化が進む中で、「微細ネジ(マイクロネジ)」の重要性はますます高まっています。しかし、この「微細ネジ」という言葉は広く使われている一方で、その定義は必ずしも明確ではありません。本記事では、微細ネジの基本的な定義と、関連する他のネジとの違いについて解説します。
微細ネジ(マイクロネジ)とは?
微細ネジ(マイクロネジ)には、JIS規格などで定められた厳密な公的定義は存在しません。一般的には、ねじの呼び径が概ね1mm台、あるいはそれ以下の極小サイズのネジを指す総称として用いられています。
この領域のネジを指す言葉として、日本では「0番ねじ」という呼称も使われます。これは、JIS規格のなべ小ねじや皿小ねじの頭部形状を定めた規格において、最も小さい番手が「1番」であることから、それよりもさらに小さいネジを指して慣例的に呼ばれるようになったものです。具体的には、呼び径がM1.0、M1.2、M1.4、M1.6、M1.7といったサイズのネジがこれに該当し、「0番1種(なべ頭形状)」「0番3種(皿頭形状)」などの種類があります。これらは総称して「精密小ねじ」とも呼ばれ、時計やカメラ、電子機器といった精密製品の締結に不可欠な部品です。
微細ネジの主な特徴と用途
特徴:製品の小型化・軽量化・高機能化に貢献
微細ネジ最大の特徴は、製品の小型化・軽量化・高機能化を同時に実現する点にあります。締結部品が占めるスペースを最小化し、内部コンポーネントの高密度な実装を可能にすることで、製品全体のコンパクト化に直結します。また、多数のネジが使われるドローンや医療機器などでは、総重量の削減にも繋がり軽量化に貢献します。さらに、小型化で生まれたスペースにセンサーや大容量バッテリーなどを追加搭載できるため、製品の高機能化も可能にします。
主な用途:精密機器から医療分野まで
上記の特徴から、微細ネジは高い精度と信頼性が求められる様々な分野で活躍しています。
- 精密機器
時計のムーブメント、カメラのレンズユニット、計測機器 - 医療機器
補聴器、ペースメーカー、内視鏡、インプラント - ロボット・ドローン
関節部のモーター固定、センサーマウント、機体フレームの組み立て - 電子・IT機器
スマートフォンやノートPC内部の基板固定、ウェアラブルデバイス
これらの分野では常に部品レベルでの小型化が求められており、微細ネジがその技術革新の鍵を握っています。
微細ネジの製造における課題と加工方法
微細ネジの製造は、その小ささゆえに特有の技術的課題を伴います。ねじ山やリセス(駆動部)にはミクロン単位の精度が求められ、わずかな誤差が締結不良を招きます。また、断面積が極端に小さいため強度が低く、締結時のトルクに耐える材質や加工法の選定が不可欠です。さらに、完成品の品質保証には、画像寸法測定器などの専門的な検査体制が求められます。
微細ネジの主な加工方法は「切削加工」と「冷間鍛造」です。
切削加工は、材料の丸棒を精密工作機械で削り出して成形する方法です。金型が不要なため、1本からの試作や複雑形状、小ロット生産に柔軟に対応できます。ただし、加工に時間がかかり、量産時のコストは高くなる傾向があります。
一方、冷間鍛造(ヘッダー加工)は、金型を用いて常温で材料を塑性加工し、頭部などを成形する方法です。極めて高速なため大ロット生産時のコストを大幅に抑えられ、金属組織が強化されるため強度も向上します。ただし、金型の初期費用が必要となります。
求められる形状、ロット数、コストに応じて、これらの加工方法を適切に選択することが重要です。
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