技術コラム
六角ボルトの先端形状の種類と各機能について

本記事では、基本となる六角ボルトの先端形状の種類と各機能について網羅的に解説し、続いて規格品では対応できない課題と、それを解決するための具体策について詳しく掘り下げていきます。
六角ボルトの先端形状とは?
六角ボルトは、頭部が正六角形をした雄ねじ部品の総称であり、あらゆる産業分野において機械や装置、構造物の締結部材として広く利用されています。このボルトの性能を決定づける要素は多岐にわたりますが、中でも特に重要な役割を担うのが、ねじ部の端に位置する「先端形状」です。
この先端形状は、単なるデザインや製造上の都合で決まるものではありません。締結する相手側の部材に対して、どのような作用をもたらすかを決定づける機能的な意味合いを持ちます。例えば、部品同士を確実に固定するための「緩み止め」機能、精密な組立を実現するための「位置決め」機能、あるいはデリケートな部材表面を傷つけずに保持する機能など、その目的は様々です。
これらの多種多様な機能を実現するため、先端形状はJIS(日本産業規格)をはじめとする各種規格によって標準化されています。設計者は、締結箇所に求められる要件を精査し、数ある規格の中から最適な先端形状を選定することが求められます。しかし、製品の高機能化や設計の高度化に伴い、既存の規格品だけでは要求仕様を満たせないケースも増加しています。そのような場合においては、特殊な形状をオーダーメイドで製作する、あるいは既存の規格品に「追加工」を施すといった特注製作が必要となります。
【種類別】代表的な六角ボルトの先端形状とその用途
六角ボルト(特に、先端形状が機能を持つものは六角穴付き止めねじに多い)の先端には、JIS規格などで定められた多様な形状が存在します。それぞれが特有の機能を持っており、用途に応じて適切に使い分けることが設計の要となります。ここでは、代表的な先端形状とその特徴、主な用途を解説します。
平先(ひらさき)
先端が平坦になっている最も基本的な形状です。相手材に対して広い面積で接触するため、部材の表面を傷つけにくいのが最大の特徴です。そのため、繰り返し同じ位置で調整・固定を行う箇所に適しています。ただし、保持力は他の形状に比べて弱いため、強い緩み止め効果は期待できません。
とがり先
先端が円錐状に尖っている形状です。この鋭い先端を相手材に食い込ませることで、非常に強力な保持力を発揮します。一度固定すると位置ずれが起きにくいため、半永久的に位置を固定したい部品や、高いトルク(回転力)が加わる軸の固定などに用いられます。ただし、相手材には明確なくぼみ跡が残ります。
棒先(ぼうさき)
先端からねじが切られていない円筒が突き出ている形状です。この円筒部分を、あらかじめ相手材に設けた穴や溝にはめ込むことで、正確な位置決めを行います。回転部品の回り止めや、スライド機構のガイドピンとしての役割も果たします。相手材を傷つけることなく、高いせん断力に耐えられるのが特徴です。
丸先(まるさき)
先端が丸みを帯びた形状で、平先に似た特性を持ちます。平先よりもさらに相手材への当たりが柔らかく、傾いた面や曲面に対してもある程度追従して接触させることが可能です。デリケートな表面を持つ部品の固定に適しています。
R付円筒形状
先端が円筒状で、その端面にR(丸み)が付けられた特殊な形状です。接触面のエッジをR形状にすることで、相手材への当たりをさらに柔らかくし、応力集中を避ける効果があります。精密機器の内部や、表面処理が施されたデリケートな部品など、極めて傷つきを嫌う箇所の締結や位置決めに用いられることが多い、規格品にはない特殊対応の一つです。
規格品の先端形状では対応できないケースとは?
JIS規格の先端形状は多用途ですが、製品の高度化や使用環境の過酷化により、要求仕様を満たせないケースが増えています。設計者が直面する、規格品では対応困難な代表的ケースを解説します。
より高い位置決め精度が求められる場合
半導体製造装置や光学機器など、ミクロン単位の精度が求められる分野では、ピッチやネジの精密さが最も重要となります。特殊ピッチの特注ネジに対する先端形状などが求められます。より高精度な先端形状や特殊な複合形状が必要になります。
相手側の部材を傷つけたくない場合
製品の外観品質が重要な場合や、締結相手が樹脂やアルミ等の軟質材である場合、規格品の先端では接触圧で圧痕が残るリスクがあります。表面にコーティングが施された部品も同様で、接触面を最適化した特殊形状が求められます。
特殊な環境下で使用する場合(耐食性・耐薬品性など)
化学プラントや海洋設備などの特殊環境では、SUS316Lやチタン、PEEKといった高機能材が不可欠です。しかし、これらの材質は高機能材かつ、難削材であり、目的に合う先端形状の規格品は流通量が少なく、材質と形状を両立させるにはオーダーメイド対応が必要となります。
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この記事では、六角ボルトの代表的な先端形状の種類と機能から、規格品では対応できない課題、そしてその解決策としての「規格品への追加工」というアプローチについて解説してきました。
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