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技術コラム

座金組込みネジ(セムスネジ)とは?特徴、目的、種類、特注製作まで徹底解説

座金組込みねじ、通称セムスねじは、部品の締結作業を劇的に効率化する特殊な締結部品です。小ねじやボルトにあらかじめ座金が組み込まれているこの製品は、生産現場の効率化と品質向上に不可欠な存在となっています。

本コラムでは、セムスねじの基本的な構造、規格、使用目的、そして標準品では対応できない特殊なニーズを解決する特注製作の重要性について詳しく解説します。

座金組込みネジ(セムスネジ)とは?その定義と基本的な構造

セムスねじとは、ねじを締結する際に必要な座金が、ねじ本体から外れないよう一体化されている製品です。現場で座金を別途装着する手間が不要になるため、組立作業の効率向上や、座金の装着忘れといったヒューマンエラーの防止に大きく貢献します。

座金が外れない仕組み(製造技術)

座金組込みねじの最大の特徴は、座金が外れないように固定されている点です。これは、特殊な製造プロセスで実現されます。

  1. 座金の挿入
    おねじを転造(ねじ山を塑性加工で作る工程)する前に、ねじの素材(ブランク)に座金を挿入します。
  1. ねじ山の形成
    転造ダイスによってねじ山が形成される際に、ねじ山部が膨らみます。
  1. 抜け止め
    転造後のねじ山の外径が座金の内径よりも大きくなるため、座金が抜けなくなる仕組みです。

なお、組込みねじには専用の座金が使用され、これらは一般用の座金と比較して内径が小さく作られています。

代表的な頭部形状と用途

セムスねじには多種多様な頭部形状があります。ナベ、アプセット、トリーマ(六角ボルト)、バインドといった形状があり、トラス小ねじやタッピンねじにも組込みねじが存在します。これらの組込みねじは、電子部品、自動車関係、建設機械など、幅広い産業で使用されています。

セムスネジを使用する2大目的:工数削減と締結信頼性の向上

座金組込みねじが電子部品、自動車、建設資材など様々な分野で広く使われる理由は、生産現場の課題解決に直結しているからです。

目的1:組立作業の簡略化とヒューマンエラーの防止

  • 組立工数の削減
    作業者が座金をねじに装着する手間が不要になり、組立作業のステップが簡略化され、トータルでの作業効率が向上します。
  • ヒューマンエラーの防止
    座金が固定されているため、組み込み忘れを防ぐことができ、締結信頼性を維持する上で重要なメリットとなります。

目的2:座金による緩み止め効果と締結信頼性の向上

組込みねじは、組み込まれる座金の機能により、締結品質の向上に寄与します。

  • 緩み止め効果
    最も普及しているP=3(平座金+ばね座金)のような組み合わせでは、ばね座金の作用によって振動や衝撃によるねじの緩みを抑制する効果が期待されます。
  • 座面保護・負荷分散
    平座金は、締結力を被締結材に均等に分散させ、座面の沈み込みや、部材へのダメージを防ぎます。やわらかい母材に対しては、外径が大きい特寸大座金を組み込んだねじ(PD=3など)を用いることで、沈み込みを効果的に防止できます。
  • 強力な緩み止め
    歯付座金を組み込んだねじ(FO=2、LI=2、LO=2)は、座金の歯が部材に食い込むことで、高い緩み止め効果と信頼性を提供します。

設計者が知っておくべきセムスネジの種類と座金の組み合わせ

組込みねじは、組み込まれている座金の種類と組み合わせによって細かく分類され、現在ではP=1、P=2、P=3といった記号で呼ばれることが採用されています。

記号例組み合わせ主な役割特徴と注意点
P=1JIS平座金のみ座面保護、面圧分散組み込まれている平座金は、現行JISではなく旧JISのサイズである場合がある。
P=2ばね座金のみ緩み止めばね座金の反発力で緩みを抑制。
P=3平座金+ばね座金緩み止めと座面保護最も一般的な複合座金(ダブルセムス)。

その他の特殊な座金の組み合わせとして、上記以外にも、設計者の要求に応じて、ナイロンワッシャー歯付座金を用いた、座金組み込みネジなどもございます。

当社の特注セムスネジ製作への対応力

当社の特注ねじ製作サービスは、規格品の限界を超える設計要件や、製造コスト・品質リスクを伴う追加工の課題を解決します。

他社で断られやすい特殊規格・難削材への柔軟な対応

  • 特殊座金の組み込み
    標準的なP=3だけでなく、やわらかい母材の沈み込み防止に対応した特寸大座金組込みねじなど、特定の課題を解決するための特殊規格に対応可能です。
  • 材質・機能性の実現
    チタンや特定の特殊合金といった難削材の使用や、特定の機能(耐熱性、導電性など)を持つカスタム座金の組み込みといった、他社で断られやすい高難度な要求にも柔軟に対応できる体制を持っています。

加工から表面処理までの一元管理体制

ねじの製造プロセス全体を一元管理する体制を構築しています。これにより、追加工に伴う品質リスクやコスト非効率性を最小限に抑え、高精度な製品を提供します。窓口を一本化できるため、お客様の手間とリードタイムの短縮に貢献いたします。

製品事例をご紹介

M8×30 セムスネジ 追加工品

バイクに取り付けるための特注セムスネジについて、お客様より「市販の六角ボルトはデザインがシンプルすぎるため、見た目にこだわりたい」というご要望をいただきました。

この意匠性の課題に対し、当社は市販の六角ネジを仕入れ、頭部を長方形に削り出す追加工を実施。さらに、鏡のような光沢を付与するバフ研磨をネジ頭部に施しました。

高精度な座金組み込みネジ・セムスネジのことなら、当社にお任せください

座金組込みねじ(セムスねじ)に関する豊富な知識と、規格外の特殊な要求に対応する高い技術力で、お客様の課題を解決いたします。

最も一般的なP=3から、やわらかい母材の沈み込み防止に対応した特寸大座金組込みねじ、ナイロンワッシャーや歯付座金を組み込んだカスタムねじまで、多様な仕様に対応可能です。規格品の限界を超えた特殊な形状、材質、精密な寸法、特定の機能性座金の組み込みが必要な際は、ぜひ当社にお任せください。材質や表面処理など、詳細についても対応可能な場合がありますので、まずはお問い合わせください。

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