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技術コラム

【選定ガイド】ネジの表面処理の種類と特徴を徹底解説!

M24x1.5 六角ボルト②
ネジの表面処理は、単に見た目を整えるだけのものではありません。
錆び防止や摩耗への耐性、導電性の確保など、ネジの信頼性と寿命を大きく左右する重要な技術です。
適切な処理を選ぶことで、製品全体の性能を向上させ、メンテナンス負荷やコストを大幅に抑えることができます。
本コラムでは、表面処理の種類や特徴、用途ごとの選定ポイント、さらに当社での取り組みについてご紹介します。

ネジの表面処理とは 

ネジの表面処理とは、素材となる金属の表面に「被膜」や「化学的保護層」を形成し、機能性を高める技術のことを指します。 
金属はそのままでは酸化や腐食を起こしやすく、環境によっては短期間で性能が低下してしまうことがあります。 
そのため、使用環境に合わせて表面に処理を施し、耐久性や外観性を改善します。 

表面処理の目的は大きく4つに分けられます。 

  1. 防錆・防食性の向上:屋外や湿度の高い環境での錆び防止 
  1. 耐摩耗性の強化:頻繁な着脱や振動のある箇所での摩耗防止 
  1. 装飾性・外観品質の確保:見た目やデザイン性を重視する場合の仕上げ 
  1. 電気的特性の付与:導電性や絶縁性など、機能性を加える処理

代表的な表面処理とその特徴 

ネジの用途や使用環境に応じて、選ばれる表面処理の種類は様々です。ここでは代表的なものを紹介します。 

亜鉛メッキ(ユニクロメッキ)

 最も一般的な表面処理で、低コストながら防錆効果に優れています。日常的な機械部品や建築金物など、幅広い分野で使用されています。 

三価クロメート処理

 六価クロムを使用しない環境対応型メッキです。RoHS指令などの環境規制に適合し、自動車・電機製品などに多く採用されています。 

黒染め(四三酸化鉄皮膜)

光の反射を抑えるマットな仕上がりが特徴です。工具やカメラ機器、光学製品などで意匠性と実用性を両立できます。ただし、防錆性能はやや低いため、油膜などで保護することが一般的です。 

ニッケルメッキ・クロムメッキ

光沢のある美しい仕上がりと高い耐食性を兼ね備えた処理。装飾品や精密部品、または耐摩耗性を求める箇所に多く使われます。 

ダクロタイズド(ダクロダイスド)処理・ジオメット処理

ノンクロムでありながら高い耐食性を持つ処理。塩害や薬品に強く、自動車・建設機械・屋外構造物など、厳しい環境下で使用される部品に適しています。 

無電解ニッケルメッキ

電気を使わず化学反応で皮膜を形成する処理で、膜厚が均一に仕上がる点が特長です。電子機器や精密機構部品に多く採用されています。 

これらの処理は、素材・コスト・用途によって最適な組み合わせが異なります。たとえば同じ鉄製ネジでも、「コスト重視ならユニクロ」、「耐食性重視ならダクロ」、「意匠性重視ならニッケル」といったように選択肢が分かれます。 

表面処理をする目的 

ネジは締結部全体の安全性を支える重要な要素です。 
もしネジが錆びてしまうと、締結トルクが変化する、固着によって分解ができなくなるなどのトラブルが発生します。 
また、錆や摩耗によるネジの破損により、事故や生産ラインストップなどのリスクも起こる可能性があります。 

そのため、表面処理は単なる外観向上だけではなく、「ネジそのものの性能を長期的に維持するための「保険」」ともいえます。 
特に、屋外設備や水回り、化学プラント、輸送機器など、厳しい環境で使用される部品では、表面処理の有無が製品寿命を大きく左右します。 

表面処理の特徴と用途 

表面処理の選定には、「どのような環境で使うのか」「どのような特性を重視するのか」が大切です。 
たとえば、屋内機器のように比較的穏やかな環境では、ユニクロメッキや黒染めで十分な場合があります。 
一方、屋外や高湿度環境では、耐食性の高いジオメット処理やダクロタイズド処理が選ばれる機会があります。 

また、電気・電子機器の内部で使われるネジには、導電性が求められるため、ニッケルメッキや錫メッキが採用されるケースが多いです。 
さらに、デザイン性や質感が重視される製品(たとえば家電の外装部やディスプレイ固定部)では、黒染めやクロムメッキなどの美観仕上げが好まれます。 

「強度・耐食性・導電性・見た目」のどれを優先するかによって、最適な表面処理は変わります。

 表面処理の選定 

表面処理を選ぶ際の主なポイントは次の3つです。 

使用環境

屋外、屋内、高湿度、海辺、化学薬品下など、どのような環境で使うかを明確にする。 
耐食性を重視するならダクロ・ジオメット、室内使用ならユニクロメッキなどが目安になります。 

目的・機能性

見た目を重視するのか、導電性や滑り性を重視するのかで選定が変わります。 
意匠部品ではクロムや黒染め、電気接点部ではニッケルやスズメッキが有効です。 

素材との相性

鉄や鋼には亜鉛メッキや黒染め、アルミにはアルマイト処理、銅や真鍮には錫やニッケルメッキが適しています。 
ステンレスの場合は、元々防錆性が高いため、電解研磨やパッシベート処理などで表面を整えるケースが多く見られます。 

表面処理の「RoHS」対応とは 

RoHS(Restriction of Hazardous Substances Directive)とは、EU(欧州連合)が制定した「特定有害物質の使用制限指令」です。環境対応の流れの中で、製造業・機械部品業界に大きな影響を与えた重要な規制となっています。 
2006年に施行された初代RoHS指令(2002/95/EC)を改訂し、「規制対象製品の拡大」と「追加有害物質の指定」を行った「RoHS2指令」が現在は適応されています。 

RoHSの目的は、電子・電気機器に含まれる有害物質を制限し、環境や人体への悪影響を防ぐことです。 
RoHS2では対象範囲が大幅に広がり、現在では産業機器や制御装置、工具、医療機器など、ほとんどの電気・電子製品が対象に含まれるようになっています。 

RoHS対応の表面処理は、環境保護の観点だけでなく、国際取引における「品質基準の一部」となっています。 
特に欧州や北米向け製品では、六価クロムを使用したメッキは一切受け入れられないケースもあります。 

したがって、表面処理を選ぶ際は、 

  • 「RoHS対応であるか」 
  • 「処理業者がRoHS証明書(または分析データ)を発行できるか」 
    を必ず確認することが重要となっています。 

当社では、複数の協力会社とのネットワークを通して、RoHS対応をしているメッキ加工や、加工した表面処理のRoHS証明書発行対応も行っております。 

ご使用される部品が規制対象となる場合は、事前に表面処理についてご確認させていただきます。 

当社が手掛ける表面処理の特徴 

当社では、お客様のご要望に応じて最適な表面処理の選定・加工手配を行っております。 
一般的なメッキ処理(ユニクロ、クロメート、黒染め)から、特殊な無電解ニッケル・ジオメット処理まで、幅広くご対応が可能です。 

また、ネジだけでなくナットや座金、金属スペーサーなどの複合部品一括処理にも対応しており、品質の均一化と納期短縮を実現しています。 
試作段階からの技術相談や、小ロット・多品種対応も柔軟に行っておりますので、「こんな処理はできる?」といったご相談もお気軽にお寄せください。 

当社の表面処理実績製品のご紹介

RoHS対応 六角ボルト

RoHS対応 六角ボルト

食品機械のお客様から、「食品接触箇所へのRoHS対応六角ボルト」製作を依頼されました。環境規制と安全基準を満たす材質・メッキの選定が必須でした。
当社は、徹底調査に基づき最適なRoHS対応の材質とメッキをご提案。RoHS証明書を提出することで、お客様は安全性と環境基準をクリアした製品を安心して採用でき、製品の信頼性向上に貢献しました。

まとめ 

ネジの表面処理は、製品の寿命・信頼性・外観品質を大きく左右する重要な要素です。 
防錆や耐食、導電、意匠といった目的に合わせて最適な処理を選ぶことで、製品トラブルを防ぎ、長期的なコストダウンにもつながります。 

「どの処理が最適かわからない」「環境条件に合わせて提案してほしい」 

そんなお悩みにも、当社では用途・コスト・納期のバランスを踏まえて最適な表面処理をご提案いたします。 

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